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元製薬会社 コールセンタースタッフへインタビュー:現場で直面している課題とは?その解決策は?

前回の記事 『ライフサイエンス業界のためのコールセンター向け対話型AIソリューション』 では、対話型AIソリューション導入によるコールセンター業務効率化をご紹介しました。今回は、少し視点を変えて、コールセンターで実際に業務を担当されている現場の方のお話をご紹介したいと思います。

製薬企業コールセンターの業務に携る現場の方が、業務の効率化やコールセンターにおけるデジタルソリューションの活用をどうお考えなのかを製薬会社のコールセンターに勤務されるAさんにインタビューを実施させていただきました。そこから読み解くことができる、コールセンター業務内容や課題点、そして弊社が考える改善方法などを本記事を通してご共有できたらと考えています。

プロフィール

Aさん:元外資系製薬会社 勤務

インタビュー

インタビュアー: コールセンターで勤務されていた際のご経験をお聞かせください。

Aさん: 正直、有人コールセンター業務はスタッフ不足のため、各スタッフは日常的に残業を強いられるなど大変でした。人材不足の問題は業務量と内容、メンタルヘルスの影響から発生しており、より本質的な問題の理解、そしてコールセンターが抱える問題の「負のサイクル」を理解することが必要です。

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私が働いていたコールセンターを含む多くのコールセンターでは人手不足が深刻です。そして、人材不足が以下のような問題に連鎖しています。

◾️ スタッフは日常的に残業を強いられている
◾️ 新人スタッフはトレーニング不足のまま現場に立つことが求められるた め、新人は現場のスピードについて行けなく、熟練オペレーターへの負担が増加
◾️ 長時間労働によって、心身ともに疲労。しかし、スタッフ不足のため休むことも難しい
◾️ ストレスの多い職場環境の為、人間関係の悪化へつながる
◾️ 過酷な現場のため離職率は高く、また新人トレーニングを行う必要があり、持続的なオペレーションができていない

インタビュアー:業務フローの観点で現場のスタッフが負担に感じていたことはありますか?
Aさん: 製薬向けコールセンターはお客さん(患者さん)の身体へ影響がある商品を扱っているため、問い合わせ一つ一つを正しく、丁寧に処理することが必要不可欠です。そのため、他業界のコールセンターに比べても、問い合わせ後のフローに大変時間がかかります。問い合わせの内容を記録し、もし苦情やAE (有害事象)の可能性がある場合には、レポートを書き上げ、それを該当部署へ提出する必要があります。また、レポートに記入しなくてはいけない内容を聞き逃してしまった場合には再度、お客さんにお電話を差し上げ、全ての情報を正しく入手し、正しく報告する必要があります。電話の受け答え以上にレポートの作成などに時間と労力が必要で、大変な業務です。

また、多忙時にも鳴り止まない問い合わせに対して、同じように一つ一つログを取る必要があります。しかし、オペレーターも人間のため、忙しさが増すとレポートやログの記入にミスが生じたり、十分な内容では無いレポートを作成したりすることが実際に起きてしまいます。もし、AEの報告をすべきであるのにも関わらず、レポート作成に時間がかかるため報告を疎かにし、患者さんの身体へ影響があった場合には大変大きな問題になります。しかし、その一方、コールセンターの現場に立ってみると、人手不足により、一人当たりが抱える問い合わせ数は規定以上のため、このようなミスが生じかねない現状だと思います。

インタビュアー:現在現場で直面している問題に対してどのような対策が取られていますか。

Aさん:労働環境の問題については、マネージメントレベルでは、チームメンバーの関係性を保ち、チーム環境を向上させるため、ミーティングやワークショップの開催を増加させています。しかし、根本的問題は人手不足によって生じている労働時間や各オペレーターへのストレスが問題なため、最終的にはさらなる雇用を考慮する必要が生じてしまうケースがほとんどです。
新規雇用に関しては、フィットする人材がすぐに見つかれば良いのですが、ある程度の専門知識や外資系企業では語学力も必要なため、そう簡単に人材が見つかるわけではありません。そして、新しい人材が見つかったとしても「新人トレーニング」という「投資工程」を求められるため、私としては効率的な問題の解決に繋がっていないと思います。

また、別の問題として、有人コールセンターはスタッフ各個人の理解と意識を共通に保つため、定期的に多くのトレーニングセッションなどのメインテナンスが必要です。
コールセンターで働くスタッフレベルでは、高いクオリティーで応対し、専門知識のみならず、それらを素早く的確に対応することを求められる上、多くの場合は製品に対して不満を持たれてるお客様を相手にするという激務であり、プレッシャーと常に向き合っています。また、ベテランはコールセンターの業務を続けるのにあたり不可欠な存在なため、休暇を取れず、新しく人手を増やしても、トレーニングが不十分なため新人が育たない、という出口が見えない状況に置かれ、ビジネスユニットとしてもとても効率が悪く、機能不全に陥ります。

インタビュアー:カンバセーションヘルスではこれまで北米の製薬会社様向けにコールセンター向けに、対話型AIを音声自動対応システム (IVR)に搭載してきました。弊社が持ち合わせる7億を超える製薬向けデータセットを元にIVRを構築するため、より製薬会社様の有人コールセンターに近いIVRを提供することが可能になっています。

Aさん: なるほど。それは具体的にどういうことでしょうか?先進的でちょっとイメージが湧きづらくて。

インタビュアー:確かにとても先進的に思われるかもしれませんが、海外の製薬会社様で導入が始まっているソリューションです。

コールセンターのシステムであるIVRに、追加で対話型AIの機能を搭載すると、従来の様に音声メニューを使うのではなく、お客様自身の言葉で、対話型AIエージェントにご相談していただけます。弊社の対話型AIは一般の患者様からの問い合わせだけでなく、医療従事者の専門的な質問も、意図を正確に理解し、質問を予測しながら個々に最適な回答を提供することができます。より詳しくは『ライフサイエンス業界のためのコールセンター向け対話型AIソリューション』 をお読みください。

Aさん: これはとてもすごいソリューションですね。現場の人間にとっては朗報だと思います。

インタビュアー:ありがとうございます。そう言っていただけるととても嬉しいです。IVRの導入は現場のオペレーターにとってどのような利点があると思いますか?

Aさん: 初めに思いつくのはコールセンター業務の効率化が挙げられます。
AIによって人間の仕事が奪われてしまうのではないか、といったことを考えている人も多いのです。でもわたしは、今仰られたような最新のテクノロジーを活用し、コールセンターにIVR用対話型AIを導入することができれば、AIが自動で解決できるお問い合わせを処理し、解決できないものを選別して有人エージェントへエスカレートすることができるのではと思います。それによって、IVR用対話型AIと有人エージェントが共存し、協力し合える環境を作り上げることが可能ですよね。

インタビュアー:おっしゃる通りです弊社では対話型AIと人間の双方が長所を生かし合う「ハイブリッドモデル」を提唱しています。

Aさん: そして、わたしの経験では、コールセンターへの問い合わせの多くは1回のコールで解決可能なFCR (First Contact Resolution)の案件であることがほとんどです。現在の有人コールセンターではこのようなFCR案件も全て人間が担当し、その度に人間が会話ログをつけるという工程が発生しています。

もし、対話型AIソリューションが自動でFCR案件を処理することができれば、シンプルな問い合わせは対話型AIソリューションが担当することが可能だと思います。そして、更に対応の自動化だけでなく会話ログも自動入力されることにより人間が行う工程はなくなり、多大な業務効率化へ繋がります。

インタビュアー:なるほど。毎日の積み重ねで大きな効率化を得られそうなのは納得です。他にはどのようなものがありますか?

Aさん:FCR案件の自動化と、会話ログ作成の自動化により、有人オペレーターの負担が軽減されることで残業時間の大幅な減少や、有人の24時間対応などリソースの最適化を行うことができるようになると思います。コロナ禍においても残業など長時間勤務をせざるを得なかったり、クレーム対応などコールセンター業務における課題もこれで随分と軽減されるでしょう。有人はFCR以外のお問い合わせに集中できる環境となり、時間と業務に余裕が出ることでサービスの質の向上につながりますし、企業としてもスタッフにメンタルヘルスの講座やサポートなどの時間を取ることが可能となり、離職率の改善期待できます。まさに労働環境の改善にも繋がりますね。

インタビュアー:FCR案件の対応が自動化できると新型コロナや台風、地震など災害でもコールセンターの対応が滞らず、医療従事者や患者さんに安定した情報提供をお届けできることは製薬業界にとって、とても重要ですね。

Aさん:業務効率化により有人オペレーターの仕事量は減少します。有人オペレーターの残業は減少し、常勤スタッフの数も減らすことが可能でしょう。

また、これまでの労働環境が悪く、離職率が高いことから入れ替わりの激しかったコールセンターでは熟練のオペレーターと新人スタッフではどうしてもサービスの質に違いが出てしまっていました。また、製品情報の変化によって、オペレーターは常に最新の正しい情報を提供する必要があるため、簡単な問い合わせに対しても、日頃から最新情報の学習が必要でした。IVRの導入によって、サービスの均一化も期待できそうですね。 

インタビュアー:その通りです。IVRの導入によって、単純な製品情報の問い合わせに対してはIVRが対応することが可能です。そして、IVRは全ての問い合わせに対して機械学習されたオペレーション通りに進めるため、サービスは均一化され、ミスも防ぐことが可能です。また、商品情報の更新があった場合も、カンバセーションヘルス社のIVRだと、カンバセーションヘルス社が会話のアップデートなどを担当するため、製薬会社様の負担は一切ありません。

Aさん:まさにコールセンタースタッフにとっては理想のサービスですね!
業務効率化、労働環境の向上によって必要な有人オペレーターは少なくなり、そして離職率も低下しそうですね。これまで入れ替わりの激しく、その度に新人トレーニングを含むコスト、労力が取られていた「負のサイクル」からいっぺん、「持続可能なオペレーション」が実現すると思います。

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インタビュアー:なるほど。IVRの導入はオペレーター、そして企業にとって大きなメリットですね。Aさんにはコールセンター側からの利点をお話しいただきましたが、対内的にスムーズで効率的なオペレーションが実現することは、お客様へのサービス向上、コールセンターの作業効率アップが見込め、有人コールセンターの各スタッフによる丁寧、且つ親切なお客様対応として最終的にお客様へと還元されるのではないでしょうか。

Aさん:その通りです。対話型AIの搭載したIVRを導入することで、企業そしてお客様により快適にコールセンターをご利用いただけると思います。

インタビュアー:本日は実際に製薬会社のコールセンターの現場に立たれていたAさんに現場の生の声を聞けて大変参考になりました。Aさんが感じられた問題点は多くのコールセンターに共通することだと思います。そして、対話型AIの搭載したIVRを導入することで、その問題の多くは解決するのではないでしょうか。現在、多くの企業はデジタルトランスフォーメーションの波に乗り遅れることのないよう、さまざまな革新的なテクノロジーを導入しております。しかし、時としてテクノロジーの導入が目的となってしまい、テクノロジーの導入によって創出可能なバリューを見逃してしまうことがあります。今回の会話は改めて、現場が抱えているペインポイント、そしてその問題解決へのソリューションを明確にできた、貴重なインタビューでした。改めて、お時間いただきありがとうございました。

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